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コラム「日本では父親が子育てのために仕事の時間を減らせないのはなぜか」
サイトウ 2013.10.21

アロマザリングな子育てをめざそう

「アロマザリング」という言葉を聞いたことはありますか?
これは、いわゆる母親が養育する行動(=マザリング)を、
母親以外(アロ)が行うというもので、霊長類でよくみられる養育の形態です。

初めての子育ての時は、ご近所に知り合いもなく、
当然知り合うママ友も、子育て初心者ばかり。
「わたしが育児するしかない」と孤独な子育てに追い込まれるお母さんも多いでしょう。

そんなとき、一番身近でしかも同じ親である夫=父の出番!!…のはずですが、
無意識のうちに、
母親自身が「子育てを自分以外の人にさせたくない」という
ゲートキーパー(門番)の役目を果たしてしまうことがあるのです。

そして、もうひとつの大きな難関は、
父親自身が「父親になる」ことに無自覚であるということ。

東アジア諸国の父親との比較から、
日本の父親が、妊娠時に「父親になる」と感じるのは3割を下回り、
出産を経ても、約4割しか「父親になる」と実感できていないことがわかります。

表 「親になるのだ」と感じた時×都市 

妊娠がわかった時胎動に触れた時産声を聞いた時初めて子どもを抱いた時
東京 25.4 26.5 40.1 63.6
台北 37.8 40.2 46.3 66.5
ソウル 32.3 30.3 59.8 71.1
天津 42.1 40.7 67.8 75.7


*数値は「とても感じた」の割合(%)
出典:深谷昌志(2008)『育児不安の国際比較』

では、どうすればよいのでしょうか?
文化人類学者の沼崎一郎教授(東北大学大学院文学研究科)は、
子育てスキルは「生まれつき」備わっているのではなく経験の豊富さによって変化するもので、
子どもとの接触が長ければ長いほど、
男性であっても「母性」を発揮すると指摘しています。

育児休業を取得した男性の多くは、
たったひとりで育児に向き合うことで、
子どもの世話をすることがどれほど重労働かに気づき、
子育てを妻と共有するものだと認識するようになります。

つまり、子育てのスタート地点から、
父親をチームプレイヤーの一員ととらえ、
思いきって子どものお世話をまかせることで、
父親もまた、「親になる」ことができるのです。

とはいえ、夫に預けると
「子どもが泣いてもほったらかし…」「いっしょにテレビを見てるだけ…」と
不満も湧いてくるでしょう。
そんなときは、「子どももいろんな大人との接し方を学んでる」と考えて、
そっとそばを離れましょう。近くにいるとイライラしちゃいますからね(笑)。

お母さんが、子どもを抱え込むゲートキーパーでいる限り、
アロマザリングな子育ては始まりません。

まずはお母さんが、子どもをお父さんの手にパスするフィールドプレイヤーへ変わること。
(このとき、口出し、手出しはガマン!)
そして、お父さんはそのパスをしっかりと受け止め、
子育てチームを担う1プレイヤーとして子どもの世話に向き合うこと。
(自分の職務を投げ出さないように!)

それが、アロマザリングな子育てへの第一歩ですよ。

[引用文献]
齋藤早苗2012「育児休業取得をめぐる 父親の意識とその変化」法政大学大原社会問題研究雑誌, №647・648
沼崎一郎2011「『母性』ってあるの?」『看護教育』第52巻6号, 488-492
根ヶ山光一2012『アロマザリングの島の子どもたち――多良間島子別れフィールドノート』新曜社
深谷昌志編2008『育児不安の国際比較』学文社

齋藤早苗
東京大学大学院総合文化研究科修士課程在学中。実は小学生2人の母、40代。
進学のきっかけは、2人目を出産した後の、体調不良と仕事の両立のつらさでした。
「なぜ働きながらの育児はこんなにたいへんなんだろう?」こんな素朴な疑問からはじまった研究生活。
現在は「日本では、父親が子育てのために仕事の時間を減らせないのはなぜなのか」について取り組んでいます。

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